国境ヨリ越後ヲ望ム(長歌并短歌,増補修正形)/Giton
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在上越国境嶺上観望越後而詠。
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(長歌)
くにざかひ オキの石根(いはね)に
なづみ立ち ふりさけ見れば
たたなづく 越後の嶺(ね)らは
氷(ひ)を纏ひ 天(あめ)に立ち立つ
雪被(かづ)き 雲に吹雪ける
谿々の 八十隈(やそくま)筋は
草埋もれ 雪に隠(こも)りて
崩るとも 人は踏み行く
消(け)てもなほ 人は行き行く
いにしへゆ ただにかくあり
時じくぞ 永遠(とは)にかくある
人は変はるとも
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(反歌)
見遥かす 越(こし)の山並 際(きは)を無み
われ現つ世を 暫し忘るも
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【語釈】
オキ:オキの耳(谷川岳の最高峰,1977m)
なづみ立ち:よじ登って頂上に立って
八十隈:道の折れ曲がりが多いこと、つづら折れ
いにしへゆ:昔から
時じく:いつでも、つねに
際を無み:果てが無いので
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