あたしの二乗/夏緑林
 
あたしをアンタで割らないで
ゼロ掛けて 消し去ってくれた方がマシよ
「・・・そこまで言うか」
憤慨する俺を尻目に
おまえはコップの水に飛び込んだ
上白糖のように
一瞬で水和して
マニキュアだけが
指示薬のように残されて
コップを握りしめる俺の手は
あきらかに震えていたが
決して出会うことのない
ことばが欲しくて
俺は一息に飲み干した

アンタ馬鹿ね
あたしは代謝されずにアンタの体を廻りつづける
しかもあたしは析出しないから
つまりあたしは確率的な存在で
形がないから濃度で自己主張するの
そしてアンタはことばを期待する
「そっ,それはこんな反応と思えばいいの
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