国道 点滅する信号線/ブライアン
線のトラックの音が聞こえる。戸建の家が並び、明かりが灯されている。テレビは何を見ているのだろう。中高生は何をしているだろう。まだ、この辺りが住宅地ではなかった頃、職場から逃げるようにして住み着いた人々。定年を迎えようとする今、彼らの汗が土地に沁み込むことはない。アスファルトで固められてしまったアルカディアなのだ。彼らの汗は道を流れ、排水溝に落ち、下水溝に流れる。下水処理場では薬品で汚水を浄化したものだけを川へ流す。彼らの汗はどの段階で空へ放たれるのだろう。風が、吹く。引っ越してきてからまだ1年が過ぎただけだ。浄化され、希薄にされた彼らの汗を感じるほどの資格はまだない。猛ダッシュで駆け下りる坂道。以前のように速く走れない。足がもつれるようにして、前へ前へ、と繰り返される。ただ、生暖かい風は、他人のように冷たく体を通過していくだけだった。
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