真冬の夜行列車に乗って/虹村 凌
 
人を脅したり騙したり物を盗んだりして
ゼロハリバートンのアタッシュケースに現ナマを詰め込んで
北に向かう夜行列車に乗るイメージを抱いている
関東を抜けて東北を越えてもっと遠くへ
トンネルを抜ける前からずっと雪景色が続くくらいの北へ
北へ
北へ
北へ
その夜行列車が東京から出るのか上野から出るのかも知らない
北には知り合いもいないし帰る場所もない
ただ闇雲に北へ行きたくて
たまらないんだ

平等も平和も信じていないのに
平等と平和を望んでいる
誰が上で誰が下で
誰が凄くて誰が凄く無くて
誰が強くて誰が弱くて
誰が偉くて誰が偉く無くて
そんなのがとっくの昔に面倒に
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