風へ消えた/塩崎みあき
漁村の上空には
薄墨を流した
空が広がる
風つよく
斜めに傾く
松はつらく
ゆられている
歩調をゆるめ
この白灰色の村
確かにあるはずの
日常を
一歩ずつ
踏み潰してゆく
おまえは
知らない
コートの裾の
哀しい孤独
魚等を干す竿に
わづかばかりの
細長い柿が吊るされ
奥の建物の破れに
隙間風
が啼いている
のに聴き入り
人魚の啼き声はきっと
こんな風だろうと思った
港とおぼしき場所に
船はひしめき合い
ただ波に揺られているだけだった
沖の青黒い海は荒れ
三角形の白波が
互いを殺しあい
これが
生活かとおののく
そんな
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