ロボット/佐倉 潮
 
 
 ロボットは扉をあけた。テラスのおもて、石畳の上
を、コツン、コツン、コツンと、規則正しいリズムで
歩いた。それからロボットは、バラの垣根をくぐり抜
け、青い芝生へ足を踏み入れた。コーンネル社製の最
新式P3型アクチュエータがアセンブルされた2足は、
春風にあおられてたじろぐふうはなく、毎秒1mの速
度で(とちゅうクローバの茂みは避けて)芝生を横切
っていった。その先にある母屋  彼女のいる部屋
に向かって。
 
       +
 
 左手にはラヴ・レター。バイロンから引いてきた 
/あなたのために世界を失うことがあっても、〜/ 
 のフレイズ。
 愛について
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