きりん草/佐倉 潮
 
 
 床に落ちたカンバスの上を電線の影が、行ったり来
たり。君はえんじ色のシートにひざを立てて、窓の景
色に見入っている。昼のさなか、大阪から京都へ向か
う各駅停車だから、人の影はまばら。遠慮しなくてい
いはずなのに、長細いシートのはしで身をもたせ合っ
ている、僕ら。
 
 いつでも月から金はあわただしい。一編の詩をゆっ
くりと読む暇も何もありやしない。五日間のふてくさ
れた人生と折り合いを付けるために束の間、電車に乗
る、なんてありふれたやり方。君は窓の外を見ている。
 
       +
 
 岸辺という名の駅を過ぎた頃、はたして川岸でも見
えるのだろうかと、僕
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