野紺菊の咲く頃/山人
遠く時空を超えると
幼い君がいた
「おとーたん、どうじょ」
ぷつんと もいだ野紺菊を
ぷるぷるふるえる手で差し出す
薄紫の舌状花をつけた花
稲藁のにおいがする午後の柔らかい日差しの中
君と僕は長い影をつれて歩いていたっけ
華の未来はあるはずさ
陽炎のようなゆらりとただ燃え上がる遠い未来
君が僕に綺麗な花を差し出した
それを僕は受け取って
大切な花だねと言い 綺麗だね、と
まるで宝物のように大切にしなければならなかった
野紺菊が咲く頃
今年ももうすぐ秋が深まって
薄紫の花を立ち上げる頃だろう
その頃になると
どうにも時空を超えて
あの頃の君に会いに行きたくなる
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