遺言/小川 葉
 
 
 
いつ死んでもいいように
道に枕をならべていく
ふりむけば枕
一日ひとつずつ
与えられた枕をならべてきた
曲がりくねった道
まっすぐな道
雨が降っている
峠道の枕はまだ濡れていて
春かとばかり思っていた
陽気なあの日の枕は
今も無邪気に跳ねている
遠い山の向こうは見えないけれど
きっと生まれた時まで
枕はならんでいるのだろう
もし明日があるならば
道に枕をならべていく
誰もいない夜も
おやすみなさいは欠かさない
朝にはまた
わたしの遺言がはじまる
 
 
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