嘘つき狼/皐
嘘つき狼
穴の中
深い深い闇の奥
外へは一歩も出られない
地上のカラスが
「大馬鹿者ね」と叫んでも
穴の底から
卑しい目をして睨むだけ
甘美な光に惑わされ
真実に目を背いたあの夜を
憎み続けてもう数年
無意味な事だと知っているのに
「どうして裏切られた?」
答えのない問いを問い続けてる
地上の光の眩しさと
澄んだ空気が恋しくて
時々、上を見上げては
言葉を発してみるけれど
誰も答えてはくれぬ
嘘つき狼
闇の中
いつか全ての者からの
記憶が薄れたその先で
きっと誰かが亡骸を
そっと抱いてくれるのを
待っているのだ愚か者
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