朱色の記憶/砂木
 
日陰に咲く木蓮の種子
春に咲かせた花は過ぎて
朱色の珠がもたれている

白い月が 青い空にかすむ頃
がさがさと荒く 深緑の大きな葉に
一羽の鴉が忍ぶ

落とされた さやの朝露ごと
くちばしに 喉に 朱色が触れる

やがて 何事もなかったかのように
電線の向こうへ 鴉は飛び去った

土の上に散らかった葉が 風に舞う









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