天使の遠足/山田せばすちゃん
 
言葉をなくした二人の間には
天使が通る道が出来るのだと
教えてくれたのは確か君だった

さっきからずっと何も話さないでいる
僕と君の間を
ほら
天使が団体で通り過ぎていく

天使が通る
ひとりめの天使は少し緊張した面持ちで
ふたりめの天使は笑顔で
さんにんめの天使はスキップしながら
よにんめの天使は僕に手をふりながら
天使が通る

カウンターで急に泣き出した君は
人目も気にしないでしゃくりあげつづけ
弱ってしまった僕は君の手を引いて
店を出てそれからタクシーを拾った
行く当てもないのに口を付いて出た行き先は
「というわけで」というあいまいな名前の
君と来
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