一番星/山人
汗ばんだシャツを背負い
夕暮れを歩く
橙色の入道雲が
薄闇に沈みかけた蒼い空に黄昏ている
少しむっとしたアスファルト
鬱血した時が、俄かに開放されようとしていた
沈静が流れはじめる
一日が裏返り
闇にもたれようとしていた
一つ星が
私をみつめている
遠い年月の井戸
忙殺された狭間で
奈落の肉が熱を帯び
毛細をつくる
氷の言葉が延髄を通り、
掻かれた。
その亡骸が
一番星となって
一人瞬いている
救えなかった命
殺した星
部屋の明かりが灯る頃
膨大な蝉の音を連れ
私は闇に狩られる
一番星は
冷たく闇を、私を、貫いた
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