記憶の海/小川 葉
 
 
 
掌に海がある
水平線のむこうから
海賊船がやってくる
わたしから大切な記憶を盗み
それで得た金で
毎晩酒を飲み騒いでるのだ
わたしは海に飛びこみたいけれど
この体から出ることができない
やがて海賊船は
水平線のむこうへ消えていく
しかたなくわたしは思い出す
盗まれてしまった記憶を
もしかしたら
それはこの体にいなかった時の
記憶かもしれない
 
 
戻る   Point(6)