不調和/寒雪
紺碧の空が覗けない
陽気な窓が遁走した部屋
くすんで白いしめやかなリノリウムが
乾いたのどを締め上げる
がらんどうな空気の真ん中に
位置を決められたパイプ椅子
腰掛けながら一人
右から左へ鼓膜を撫でる
友の車座で談笑する声
空洞な会話の刺々しさに立ち上がると
ひび割れた床には無表情な剥き出しのタイル
朧月夜に触れることの出来ない
白い天井が騒々しい部屋
真一文字に瞳を塞いでも
まぶたの裏を紅く染める
頭上から降り注ぐ蝋燭の灯
腰掛けながら一人
セピアに色づいた脳裏の奥
焼け野原で嗅ぐ焦げた皮膚の音に
毛穴から焦りが叫ぶ
見開いた眼前に広がる
体温のない白く沈黙した闇が
短く切られた紅い舌を震わせる
苛立つ拳が
静寂に質問を投げかける
返答の代わりに
隠された言葉に鍵がかけられ
混沌を抱え込む術が
衝動をプレスしてかたどられる
闇に塗りつぶされた
心臓の鼓動だけが
規則正しく働く柱時計を気取って
チック、タック、チック、タック
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