夕暮れに似合う歌/真島正人
 
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唐突な出張でもないのに久しぶりに
夕暮れの新神戸駅に一人
立っていた
こじ開けられたまぶたのような
雲の向こうに
夕陽がぎらり
虹は見えない
天使も見えない

救命器具をくださいと
小さな女の子の声で
ささやくような気がして振り向くと
そこには線路が
ごうごうとうなり声を立てていた
列車が来たわけでもないのに線路は
それ一つだけで
ごうごうと

唐突な夕暮れでもないのに夕暮れは
こんなふうに一人ぼっちを
奮い立たせて
キッチンに立っている女の人の匂いや
ベッドの中の若かった
女性の匂いを
季節柄に合うカーディガンみたいに
僕にかぶせてし
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