「べっちょない」/yumekyo
 
部屋のベランダから
深夜の都会に集う
夜光虫のような
光の粒を追った
ぼんやりとかすむ
まばらな光が
居るべき場所を求めて
とりあえずと思って
同じ場所へと向かっていった

皆かろうじて光っていることはできるけども
他人の手元を照らすほどの余裕はない
ひよわな青白い光
断言するなら
生存証明の灯りにしか過ぎない

「だいじょうぶだよ?」といわれることには
みんな なれっこになっている
「だいじょうぶだよ?」と胸の内で唱えて
暑さ寒さの厳しき頃を
ひとりで押し黙って働く
そしてようやく
ひよわなこの青白い光を得られるのだという

深夜の都会に集う
夜光虫のような光の粒は
とりあえずと思って
同じ場所へと向かっていく
速すぎる変化に耐えて生きることではなくて
普遍の Steady を求めて

「べっちょないよ?」

(注)「べっちょない」=(他人を安堵させる為に使う)「だいじょうぶだよ」
兵庫県西部の方言。
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