熱/小川 葉
 
いた
民宿の部屋には
まだあの日の父の気配が残っていた
私は小説を書くことにした
女中がお酒をすすめたが
私は断った

雨が雪に変わっていく
カーテン越しに
それは音でわかる
静かなのだ
明日はのんびりと
春スキーを楽しもうと思った

朝目が覚めた
私は私の息子に起こされていた
なんとなく
関節がいたい
熱があるようだった
小説も春スキーも
今日は諦めることにした
肉が足りないとかなんとか
息子が妻ともめている
そのまま二人は仕事に
保育所に出かけていった

私はふたたび眠り
あの民宿の部屋を探しにいく
風邪で仕事は休むことにした
私は私の夢の世界に
もう一泊することにしたのである


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