Queeeen/salco
 
忌々しい、さて
も神を騙(かた)って国王を欺いた大逆にはどんな趣向が相応しかろう。
 いや、今は考えまい、体じゅうが痛うて怒りまでは持てぬ。余が欲する
のは、今、欲しておるのは。はて。
「大頭とか言うた、あれを捕らえよ」

 見れば腹に描いた模様は蛇腹に折り畳まれて萎み、貪婪の口もすっかり
弛緩して今や別物の、死獣の乾いた皮革のようだ。女王はいっそ声高に笑
いたかった。左様、余は円かじゃ。余は足りておるぞよ。ああ、
「桃じゃ」

 はい只今、という声より素早く侍女の裳裾が床を滑る。こま鼠より俊敏
な内務大臣を次の間で追い抜いたほど、空腹が短気に加味する辛辣を桃の
味より知り抜いていた。

                              つづく
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