狭苦しいバー/真島正人
 
息が詰まるほどの
狭苦しい都心のバーで
ビートルズを延々と
聞き流しながら
炭酸で割った
スピリッツを飲む

気心の知れた
大学からの友人と3人

「疲れたね」
「煤けたね」


口には出さないけれど
援護射撃のように
語り合う

「いつから僕たちはこんなにも」
が今回の
隠されたテーゼで

何かほかの事を
話そうとするのに

いつかの
時点から見た僕たちの
疲れた後姿が

会話の周縁を
衛星のように
飛び回っている

「プロコルハルムの『ソルティドッグ』
のジャケットが見たくなってきた。ビートルズを止めろ」

と友人が言う
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