ツララ/山人
 
ローカル線のまだ暗い無人駅
駅舎から少し離れた作業小屋
中ではストーブが赤々と燃えている
長靴についた雪はとけてゆく

庇には
外灯に照らされたツララが生っている
ほの明るいオレンジ色を
透明な胎内に蓄えている
視線を動かすと
オレンジ色の命は輝き
動いた


早朝の外はまだ暗い
早朝仕事のあとの
一服時の作業小屋

中では若い監督さんが無心にスマホを見ている
これからの人
これまでの人
が入り混じった
作業小屋の温度と
おもいが攪拌され
外に出され
凍る

ツララは
濡れひかる妖しさと
輝き切る頑なさを保ち
粉雪の舞う中
凛々とオレンジ色を輝かせていた
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