へそ/乱太郎
 
 「へそ」

夕立とともに雷が落ちる音がして
少年ははっと目覚める
もしかしてへそが盗られていないか
あわててシャツをめくり
お腹にちいさな穴が残っているのを
確認して
ほっとしながら
また少年は夢の国に戻る

雨が上がって日が差してきたとき
老人はふと気が付く
もしかして繋がっているのではないか
空の向こうと自分が
見えないへその緒で結ばれて
先だった妻のところへ
生まれていくのかもしれない
ほっとしながら
何度も老人は平たくなったお腹をさする





 「やり直し」

数行しかなかった
これまでの人生
マス目のついた原稿用紙も
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