シンダーガールの目覚め/唯浮
 
てゆく
海苔のような田んぼの群れ

そうだ、これがありふれた風景だ

黒地に灰色の縞々模様
混沌としていて悠然としている
未だ足を守っている靴

忘れようとするだろう
捨てられる運命ならば
境目に取り残された靴

そうだ、これがありふれた日常だ

踵を返すまでもない
非日常に逆行したり
抵抗して揺れている贅肉たち

そうか、それらは予期せぬ現実か

朝焼けの中ですぐに見つかった
孤高に限りなく
確信に到った自身で

片割れの靴、ぽつんと
毅然と変わり果てて
野良犬にも見捨てられていて

安全圏の舞台から飛び降りる
風の青色と見守るレンガ
一緒になって胸に抱き上げて

美しい靴を黄色い線の内側に
そっと儀式的に置いて
履いてみるずたぼろの靴

そうして
嗚呼、漸くの事
私は唯一無二
隅々まで満足した

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