シンダーガールの目覚め/唯浮
 
主の居ない壊れかけの蜘蛛の巣に
わざわざかかった薄茶の蛾
そこに光でも見えたのかい
でも人工的なものなんだよ

ごらん、あれが唯一のものだ

電線が張り巡らす中
四角い結界にみっしりと
埋まっている
斜に傾いた半月

ごらん、あれが無二のものだ

かかるべきは此方と彼方
吸い寄せられて見失わず

視線が邪魔だったか
悲しい束縛にホームのイスが
無人を告げても時遅し

来るべき時に来た列車と
自分の信じた安全圏
境目がぱっくり開けた黒い口

よく言われていたっけな
幼い頃から野良猫に

落ちるなよ
 足を踏み外すな
  よく足元を見よ

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