ぼんやり/あ。
 
耳たぶがかさかさすると思ったら
どうやら蟻が一匹のぼってきてたらしい
上半身だけゆっくりと身体を起こす
よく伸びた夏草が足を覆いかけている


さっきまであおいろばかりだった空に
いつの間にか入道雲がもくもくと生えている
いち、に
二つ並んで夫婦みたいだ
こんな気持ちばかりのそよ風に
崩れるわけにはいかないと言わんばかりに
どっしりと根を下ろしてしまったかのように


少し向こうにひょろりと伸びた向日葵が見える
いち、に、さん
茎は三本花びらはたくさん種もきっとたくさん
誇らしく大輪に咲いていたこともあったろうに
今ではすっかり縮こまって俯いている



[次のページ]
戻る   Point(10)