午睡/小川 葉
さもなければ帰ることが出来ない
と、言うところから
その夢ははじまっていた
いつか見た夢の続きかもしれない
よくわからないけれど
帰ることが出来ない理由もわからない
さもなければ、と言うからには
さもあらなければならない
とでも言うような
事情がはじめからあったのかもしれない
見知らぬ女が私に言う
さもなければどころか
どこにも帰ることが出来ないのよ
私たちは永遠に
ところでさっきから
カレーの良い匂いがする
今夜はカレーなのだ
妻が作っているカレーなのだ
私は絶望の世界から
一目散に目を覚ます
さもなければ帰ることが出来ない
と、言うところからはじまっていた
ここもまたひとつの夢の世界かもしれない
おかえりなさいと妻が言う
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