浮かんでは消える。/かいぶつ
がらん、とした外野席から君だけが一人
僕しか立っていないグラウンドに向けて
精いっぱいの声援を送っている
昔っから運動が不出来だったが
バッターボックスから飛んで来る
白球を捕えて、ホームべースへ一直線に
投げ返すと言う想像にかまけて
僕の少し冷えてきた耳はうわの空で
君の声がいつもより
およそ90フィート、遠い。
大きな麦わら帽の中で
君の声が次第に物憂い紙風船のようになり
となりの空席に置いてある
マグボトルの中で姿勢を崩した氷の音が
僕の耳に凭れた気がして
僕の緊張は視野の中心からめくれて
最後は白いファウルラインに溶け込んでいった。
そもそも、グラブも
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