恋歌/寒雪
秋が深まる頃に
音もなく舞い落ちる銀杏の葉
通りを行く人々は
無意識のうちに踏みにじる
懸命に生きれば生きるほど
他人に利用されて
手元には喀血しか残らない
長い間
繰り返し繰り返し
やがて心の奥底には
傷ついた自分が折り重なり倒れこむ
鏡に映った自分に向かって
でかい石を投げつける
そんなふうに自分を否定することが
唯一無二の攻撃
明日世界が滅びることを願っていたその頃
ぼくはあなたに出会った
極寒の南極大陸が吐き出す
寒さの中に一人取り残されたぼくを
あなたは桜の季節に連れて来て
満開の美しさを教えてくれた
堅く閉ざし続けたぼくの要塞を
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