黒/寒雪
で新しい皮膚を手に入れて
また次の駅へと出発していく
けれど予定時刻に電車は来ない
握り締めた片道切符は
影が持ち去ったのか
手の平にはインク跡だけが
辿りつく目的地を示している
舞い上がった太陽の発熱を
全身に浴びる魂の神々しさを
煙たがって咳払いしてみる
寂しげなそよ風が仲間を思って
ぼくの肩をそっと叩く
すぐ消え去ってしまうのに
仲間面するやつらに
当てずっぽうに舌を出す
太陽が水平線に戻っていく
一仕事終えて
お酒を飲んで顔が紅い
みんなの顔も紅い
やがて太陽がベッドで
高いびきをかき始めると
酔いが醒め
モノトーンな風景に囚われる
みんなおかえり
ぼくはようやく落ち着いて
家路につく自然たちを出迎える
足下には影が戻ってきていた
二度と捨てていくなよ
ぼくは冗談めかして
出戻りの影を拳で叩いた
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