紋章/森の猫
 
あたしの左手首には
月型の紋章がある

うまれたときから
皮膚がすこし
もりあがっている

あなたと
初めて会ったとき

唯一のアクセサリーの
時計をはずして

その月型を
みせた

あなたは
そこに そっとくちづけて

自分の左手を
あたしにみせた

太い男らしい手首に
同じ 月型

あぁ・・・・

あたしたちは

あたしたちは
やっぱり
同族だった

古代 いや
歴史もなかったころ

人類の祖先が
月にいた頃の
生まれ変わりの
しるし・・・

だから
あたしたちは
磁石のように

月の軌道に乗ってしまったかのように
惹かれ合ったんだ

あたしたちは
もうはなれられない

きつく きつく
抱き合った

朝まで
ずっと

暗い空から
月がやさしく
照らしていた
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