四十九日/小川 葉
 
 
 
四十九日
冷たい雨が降っている

きっと
わたしが帰らないからだ

どれだけ
待っていたことだろう
わたしの帰りを
孫と一緒に暮らしたかった
日々を

待たずに父は
いってしまった

なんて
書きはじめると
母と妹は
また兄が暗いことを
書いている
なんて
思うかもしれない

けれども
今日でやめようと思います
ほんとうは
こんなこと
書きたくなかった

四十九日
涙を拭いて
父が歩いていきます
きっと
雨上がりには
虹がでるでしょう

虹の橋を渡って
歩いていきます
遠い場所へ

はじめてたどりつく
その場所へ

父のいない
わたしの
あたらしい場所へ

希望をにぎりしめて
傘をさしていた
私も
四十九日になれば
傘を閉じることでしょう

虹が消えるまで
ほんとうの
さよならが言えるまで

帰ることのできない
時と場所があることを
理解できるまで
 
 
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