偏西風/小川 葉
ため息が
カモメとなり
秋の空高く羽ばたいていく
ヒツジ雲のせなかで
羽を休めていると
ヒツジたちはみな
おなじどこかから
もうひとつのおなじどこかへ
歩いてきたことがわかる
何も思わなくても
ヒツジ飼いが
ヒツジたちを誘導している
これから行く先へ
カモメが降下してくる
小さな点に向かって
空から見下ろせば
ヒトは小さな点にすぎない
その小さなかなしみも
空から見下ろせば
秋の空を見上げ
深く息を吸う
ため息のあと
ふたたび息をするまで
ヒトは短い夢を見ていた気がする
ヒツジ雲のすきまを
カモメが飛んでいる
ヒツジ飼いも
見えるような気がする
気がするだけで
偏西風が吹いている
これから行く先へ
これまでも
そうしてきたように
ヒトは見ている
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