孤猫/三田九郎
偽りのやさしさを振りまいてきた
悲しみも知らないし
よりそうこともできないくせに
見せかけの安い言葉を並べてた
ずっとずっと本当にずっと
抱いていて欲しかった
凍える猫は今夜も夢で
わたしの情けに爪を立てる
ひとときのぬくもりなんて
ないほうがいいのかな
眠れない冷えた身体を
浴槽に埋めて浮かんでみる
罪が底まで連れて行ってくれたらいい
いつもより星が遠いね
光にさえ遠い迷路
ねえ
あの時の
わたしを責める君の台詞が
ずっとずっと止まないの
わたしのこの世界から
君がどこかへいなくなっても
いつまでも反響する
罪を問うこだま
静寂に住めなくなってから
どれくらい経ったろう
静かになると
君の声が聞こえるけど
冷たい夜の水底の
わたしだって凍える猫
恐いくらい
空はきれい
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