☆172 ハヘン/貴水 水海
俺は夜の空を漂流する
ただ風にのっているだけだ
怖くはないぜ
ただ悲しくなるだけだ
寂しくはないぜ
ただ色んなことを思い出すだけだ
夜の空は
俺の知っている夜の空は
あちこちに
想い出の欠片が泳いでる
赤い欠片 青い欠片
丸い欠片 尖った欠片
俺は
昔葬ったはずの欠片を見つけた
よく見ると
あのひとの微笑みが浮かんできた
なつかしさと痛みで
欠片を握り締めると
欠片は粉になって
キラキラ光りながら
夜の風に飛ばされていった
遠くに飛ばされていったぜ
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