仙石原にて/西日 茜
ススキの穂の群れの中でキスをしました
高く澄んだ青い空が見えました
ここは心の中にしまっておくための
誰にも邪魔されない場所だから
あなたとわたしは幸せでした
サワサワと穂が揺れて包むものだから
抱き合って髪をなでました
悲しむことはありません
あなたはとても良い子ですから
わたしがなでてあげましょう
青い青い空と青い青い臭いと
ススキは穂を伸ばし
わたしたちに絡みつきました
金色の波はゆらゆらと
風の来るほうからゆっくりと流れ
湖の方へと下降して行きました
流されているようでした
絡みついた穂にすっかり包まれて
シューゲイザーのような
黄昏がそっと近づい
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