お母さんの右足/ゆるこ
新しい世界を見せてあげるとあの子は鳴いた
カモシカのような片足を震わせながら歌った子守唄
揺さぶられる、現実から見放した濁りすぎた瞳に
映る幾千の輝きはいのち
生命力が溢れ出した
それは蛍みたいに舞っていた
新しい世界がちらついた
あの子の瞳は緑に染まっていた
私は産声をあげたかった
世界が見えるよ
800万画素の世界が見えるよ
なんの補正もなしに
私の濁りすぎた瞳に映るよ
時折はしる黒い黒いノイズは心だよ
感情だよ
私の腐りかけた心だよ
美化されずに語りかけるよ
・・・・・・
カモシカみたいに美しく引き締まっていた
最後まで感覚はあったんだ
だから私は愚かしく鳴いた
だから私は愚かしく鳴いた
・・・・・・
硝子みたいな緑が私を識別する
あの子は足場を作りつつ私を手放した
それはとても悲しい指先で
脳内はずっと鳴いていた
森を走る右足は美しく
まるでそれはカモシカのようだった
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