古戦場/寒雪
 


森林の息吹が
厳かに顔を覗かせる朝焼けの
遠慮がちな体温に溶けていく
パレットで混ぜ合わせた深緑は
慎ましやかな陽光に
次第に緩やかなグラデーションで
塗りこめられていく
遠くで待ち合わせに遅れた鳥の言い訳を
一日を始める動物の床擦れを聞く
人間を嗅ぎ取ることの出来ない
ただそこに産まれた自然を
肺一杯に取り込む


焼け爛れた木々の悲鳴も
刀で切り刻まれた雑草の絶叫も
満たされた静寂から
目に感じることは出来ない
積年の死体を意識して
湿りがちな土肌を背中に感じ
時間と共に厚化粧になる太陽に揺られて
一日経てば立派な干物になれるか
勝負を挑んでみる
足を引きずり彷徨う時と足並みを揃えて
やがて自然に合わさり消えていく肉体
刹那魂は自然に取り込まれ
静寂な深緑の血肉と化す

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