敬老の日/小川 葉
 
 
 
ゴールデンベアの
帽子を買った

父が好みそうな帽子だったので
贈ろうとしたけれど
もういないので
私がかぶることにした

ある日
エレベーターに乗ると
父がいた
それは鏡に写る
私だった

帽子をかぶると
父によく似ているのだった
そういえば
父はゴルフが好きだった
私は嫌いだったけれど
冗談でも一度くらい
ゴルフに連れてって
といったら
嬉しそうに
私をゴルフに連れてってくれた
かもしれない

子供の頃
ゴルフウエアブランドの
アンダーシャツを
父が買ってくれた

三十年経った今も
その服は
破れたりほつれたりすることもなく
寒い季節になると
よく着ている

とてもあたたかくて
これはもう
一生着続けるのではないだろうか
皮膚のように
次第にたるんだり
伸びたり
朽ちたりしながら

父によく似た
帽子をかぶった
私の顔のように
 
 
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