朗読する巨人/豊島ケイトウ
 
 目には見えないが
 確かに巨人の朗読が聞こえる
 すぐ近くにいるときもあるし
 間遠いところから
 細々と聞こえるときもある
 詩や あるいは詩が
 巨人は聖書のゴリアテとは
 一切関係ないものの
 高く鈴なりになった枇杷を
 もぎとろうとするその姿は
 いつ石を額にくらっても
 おかしくない危うさがある
 巨人を
 巨人に育ててしまったのは
 まぎれもなくこのわたしだが
 巨人を
 朗読するのみの
 無能のがらくたの
 不在の巨人に追いやったのは
 まぎれもなく
 この世界の小人たちだ
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