“私に触らないで”/蒼木りん
 
“私に触らないで”

そんな顔をしているのかもしれない


知り合いは

私に明るく声をかけない

知らないふりをするから

私も知らないふり

逆も有る

次に合ったときには

何もなかったように話す


ただの知り合いなんか

いらないのだけれど

息だけして

一人で生きてるわけでないから

仕方ない

知り合いは増える


ショッピングセンターでは

必ず誰か知り合いがいるから

私は存在を消したい


恋人は

抱擁する

求める

私を


“私に触らないで”の顔は

恋人には映らない
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