スクラップブック/結城 希
しかめ面の空の下
排気ガスが充満する都市の片隅を
少年時代の自分が駆けて行く
らく書きだらけのノートを
大事そうに抱えて
裏通りの路地を縫って
山道を抜ければ
大人たちの知らない
楽園がある
ガラクタの中に 君と築いた
二人だけの秘密基地
僕は壊れた冷蔵庫に腰かけて
意味も知らず
形にならない夢を描いた
君と二人でノートを広げて
めくって のぞいて
笑い合ったね
最後の日
落としたノートが
ばらばらに散って 風に舞った
君はまた、見知らぬ土地へ旅立ってゆく。
僕は夢から醒めたように
ゴミの山を後にする
ばらばらに散った紙
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