やがて死ぬ でも それで良い/うめぜき
 
確か 
音楽は聞こえていた 
かすかな光に包まれていた 
天使がいたかどうかは覚えていない 
けれども 
私は生まれていて 
私は泣いた 
今 
この、今 
あなたの頭上に 
幾重にも 
音楽が降り注げと 
私は揺れる 
呼吸する 
重たい 
やがて死ぬ 
でも 
それで良い 
ただ 
ただ一度だけ 
もう一度だけ 
誰かに死ぬほど愛されたい 
目が覚める 
音楽は聞こえない 
天使も舞わない 
だが空気がどこか弾んでいる 
きっと 
どこかで 
誰かの産声と泣き声とが響いている 
音楽は何処かで 
誰かの為に響いている 
涙が蒸発できずに 
胸元で熱を帯びている 
そうか 
蒸発できないのか 
と 
独り語ちてみる 
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