倉庫/小川 葉
おさない頃
倉庫に閉じこめられた
なにか悪さを
したのかもしれない
わたしは泣いた
父の足音が遠ざかり
もうだめかと思っていると
ふたたび父の足音が近づいてきて
鍵があいて
扉が開くと
太陽がまぶしかった
父がわたしを閉じこめたのは
一度きりだった
けれどもわたしは家を出て
自らを
閉じこめてしまった
父の足音を遠ざけて
鍵をあけようと
何度も父は近づいてきたけれど
わたしはそこから
出ようとしなかった
先月
父が死んだ
足音はもう聞こえない
鍵がもう
ないのだろう
わたしは
わたしの力で
ここから出なければならない
どうすれば
出ることができるのか
倉庫の中で
ひとり考えている
扉の外で待っている
まぶしい太陽と
父がいた
幸せな日々のために
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