Go On/寒雪
 


突然着メロを歌った携帯電話が
静寂の中伝えたのは
友人の死だった
半年間
人工呼吸器に括られた彼は
むしろよく生きた方だと
母親の声が途切れ途切れに
電波状態のせいではないことが
無念さを駆り立てる


告別式の日は小春日和
お棺の中
小さくなった彼は
騒がしすぎるほど静寂で
悪寒を感じるほど雄弁で
彼の面影を死化粧が上書きし
一個の「物」に変質させる
献花を彼の心臓に置く
いつか海外で絵の勉強をしたい
嬉しそうに語った彼
今頃イタリアの空で
海をキャンバスに絵を描いている
夢が叶うといい
見上げた空には彼そっくりの雲


十代の頃

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