チワワみたいに小さくて/(罧原堤)
 
 脳がねばっとして、何も手につかない。床には数日前に嘔吐したウィスキーとその日に食っていた食べ物が、吐き散らかされたままで、悪臭を放ち、部屋から抜け出るとき踏むと足に粘りついた。ただ拭きとればいいだけのことすら、する気にならなかった。どうでもよくなっていた。何をやったら自分の人生に光が差し込んでくる行為なのかがわからなかった。少しずつ自分の進むべき道がわからなくなってしまっていっていた。半開きのドアから隣室の天井が見える。僕がこの家に引っ越してきたのは、そうだな、もう6年にはなる、その時の天井と今みえている天井は同じ、そうだった、昔はあの天井の下で僕は寝起きしていた、6年前、あの頃の僕は人とまった
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