夏葬/萩野なつみ
 
気がみえないうちに。
そうして鉄塔だらけの街で
たからかに
燦然と
掻き出される紅。

(夏、が
 子午線をくだり
 可能性のすべてを奪い去るまで
 おまえの舌先にのこっていた、みどりの
 陽光 /あかるい、ほう、へ、
 わたしの体表にあますところなく
 突き立てられるさけびに
 みじろぐ必要はない
 なぜなら、 

ごととん、
揺れる揺れるわたしたちが揺れないことなど
あったろうか、骨壷にみちる
不在
たおやかな手つきで
つつみこむあれは誰(めしいて、いる、
窓に吹き付ける砂のむこう
誘蛾灯にちぎれる翅
うるむ しおさいの 輪。

(いつも
 目ざめれば夏の、ただなかにいて
 おまえののこしていった
 ついに語られないものだけが
 燃え立つような紅をたたえて
 まひるのリネンにみちているのだ、

(あの鉄塔のふもとで
 掻爬されたのはわたし
 わたし?) //目ざめれば夏の、
ただなかにいて。






戻る   Point(13)