夏葬/萩野なつみ
気がみえないうちに。
そうして鉄塔だらけの街で
たからかに
燦然と
掻き出される紅。
(夏、が
子午線をくだり
可能性のすべてを奪い去るまで
おまえの舌先にのこっていた、みどりの
陽光 /あかるい、ほう、へ、
わたしの体表にあますところなく
突き立てられるさけびに
みじろぐ必要はない
なぜなら、
ごととん、
揺れる揺れるわたしたちが揺れないことなど
あったろうか、骨壷にみちる
不在
たおやかな手つきで
つつみこむあれは誰(めしいて、いる、
窓に吹き付ける砂のむこう
誘蛾灯にちぎれる翅
うるむ しおさいの 輪。
(いつも
目ざめれば夏の、ただなかにいて
おまえののこしていった
ついに語られないものだけが
燃え立つような紅をたたえて
まひるのリネンにみちているのだ、
(あの鉄塔のふもとで
掻爬されたのはわたし
わたし?) //目ざめれば夏の、
ただなかにいて。
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