夏葬/萩野なつみ
 
扉などあってもなくてもよくて、
それはわたしの肺が
さくばん死んだ蛾の燐粉で
みたされるのとおなじこと。(こうこつ、
通り抜ける、みどりの、さけび
それは あした
砂丘につづく列車に
骨壷をだいてしずまる
みしらぬいのちとおなじこと。

(おまえが子宮の底で
 描きちらかした空と海とは
 行き場のないほどにあふれて。
 飲み込まれる寸前にのばした腕に
 からみつく蝉時雨。
 生まれたいいっしんに
 夏を呼び込み
 おまえの鼓動はとまる。

投函された
真っ青な不在票と
わたしの内壁にみちる、原色の、
残照。   /いま
生まれるためには
なにも狂気が
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