火の森/非在の虹
 
炎となっていた。炎が木や草の形をまねて燃えているのだった。針葉樹のような火や 広葉樹のような火や 下草の形をしているが火であるものが 島のごく一部の岩場や砂浜以外すべてを覆っている。やがて夜になった。島の上空だけ夕焼けを起こしているような眺めで、暗い海上でその島だけが顕わにされた。

帰るヘリの中で「不思議なものを知っていたね」と私は言った。「知らなかった。おまえが面白がると思い言っただけなのだ」と父は首をかしげている。そんなことが起こるものだ と私は思って煙草に火を付けた。その小さな火を見て 火の森があるならそこに住む火の動物がいるかもしれない と考えた。今度は子供たちを連れて来ようと話したのだが いつまでもヘリコプターは夜の闇の中で 人工の火も自然の火も私たちを照らし出してはくれない。
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