火の森/非在の虹
「火の森というものがある」と父が教えてくれた。私が火山の調査のためヘリコプターで火口の上空を飛んでいる時だ。父はそれまで私の横で眠っていたが ふと目を覚まして そう言ったのだ。火山は穏やかだった。二回りほど旋回してから 私は「それはどういうもの」と訊ねた。
それは樹木自体が火そのもので出来ていて森を形成しているということだ。「それはどこにある」と訊ねると 「ここからなら近い」と言う。私はヘリをそこに向けた。しばらく海上を行くと 空に向かって逆巻く黒煙が見えてきた。規模の大きい山火事のようで、自然と私の鼓動は早くなっていた。
父の言う通りだった。それは島であったが 島を覆うすべてが火炎と
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