最後の家族/小川 葉
 
 
 
前田屋というそば屋で
四人でそばを食べた
あれが最後だったと思う

ほんとうは
生まれたばかりの息子と
奥さんのそばに
いなければならなかったのに

遠いところから
会いに来てくれた
父と母と妹と
そばを食べにいった

いっしょにいてあげなければ
駄目じゃないかと
母が私に言うけれど
父は
いっしょに来たかったんだべ
と、笑って
私を庇護してくれた

こんなふうに
四人で過ごす時間は
望んでも
これからあるものではない
そのことを
父はよく知りながらも
これからもずっと
ありつづけると
信じていたのかもしれない

私には妻
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